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F.o.R.はFrame of Reference(判断枠組み)の略です。Frame of Referenceは「品詞」と「働き」と「活用」という3つの抽象的な概念をtoolにして「英文を背後で支えている目に見えない構造」を視覚化する手法です。

この手法を身につけると、英文を読み書きするとき、英文の構造がはっきり見えるので、辞書だけを頼りにして、自分の読み方、書き方が正しいか間違っているか、自分の力でわかるのです。これがわかるということは、自分で間違いに気がついて、自分で直せるということです。つまり、辞書だけを頼りにして、自分で意識的に読み書きをコントロールできるのです。

英語を丸暗記だけで勉強してきた人は、自分の読み方、書き方が正しいという根拠は、「他の人(特にnative speaker)がそう読んでいたから、そう書いていたから」ということ以外にありません。ですから、見たこともない英語に遭遇すると、自分の読み方で正しいかどうか確信が持てなくなってしまうのです。あるいは、暗記しているフレーズで表せないことを書かなければならなくなると、自分の書く英語が正しいかどうかわからないのです。ところがFrame of Referenceを身につけている人は、自分の読み方、書き方にFrame of Referenceを当てはめれば、それが正しいか間違っているか、自分で判断できるのです。

「品詞」と「働き」と「活用」は、たいていの人が聞いたことはあります。「品詞」は名詞、動詞、形容詞、副詞などです。「働き」は主語、目的語、修飾などです。「活用」は原形、現在形、過去形などです。誰でも名前は知っているのに、誰もが軽視している(というよりも本当の重要性を知らない)この3つの概念の本当の使い方を学ぶと、英文の読み方、書き方が劇的に変わります。暗記ではなく,自分の思考力に基づいた読み方、書き方ができるようになります。

F.o.Rによる構文の勉強が実際どのように行なわれるのかを示す良い例があります。それは第二次大戦中の英国の首相ウィンストン・チャーチル卿が名門パブリック・スクール‘ハーロウ校’で英語を学んだときの有名なエピソードです。チャーチルは劣等生で成績はビリだったのです。チャーチルの著書“My Early Life”からその部分を引用してみましょう。

「私は、このあまりパッとせぬ地位を約一年ばかりつづけた。しかしこのビリッコ組に長くいたおかげで、最もよくできる生徒よりずっと利益を得たことがある。彼らはラテンとかギリシアとか、その他えらいことを学んだが、私は英語を教えられた。劣等で英語のほかに覚えられぬと考えられたからだ。この劣等組に世間で等閑視されていること、すなわちただの英語を書くことを教える役を託されたのが、ソマヴェル先生であったが、この人はじつにいいひとで、私はこの先生に非常に負うところが多い。彼はいかに英語を教えるかをよく心得ていた。彼ほど教えかたの堂に入った人はないように思う。我々は英語の説明を細かく聞いたばかりでなく、たえず文の解剖を練習した。先生には彼独特の教授法があった。彼はかなり長い文章をとって、それを黒,赤,青,緑のインキでいろいろの構成分子に分ける。主語、動詞、目的語、関係節、条件節、接続節、離接節など!みなそれぞれの色彩をもち、それぞれの括弧に包まれる。それはまるで、一つの練習問題のようで、毎日のようにおこなわれた。そして私は四級三、最下級(B)にだれよりも三倍長くいたから、人より三倍よけいにやった。
私は完全に習い込んだ。普通の英文なら、その基本構造を骨の髄まで徹底的に覚えた。これはじつに尊いことだ。それゆえ、後年、美しいラテン語の詩や、簡潔なギリシア語の警句を書いて褒賞をとった同窓が、生計をたてるため、あるいは世間に出んがため、普通の英語を書かねばならなくなったとき、私はこれと伍してなんらの遜色を感じなかった。」

このソマヴェル先生の教授法はFrame of Referenceとまったく同じではないにしても、非常によく似ています。このやり方は一見すると瑣末なことにこだわり、木を見て森を見ない古くさい教授法のように思えますが、実はこの練習を繰り返すことによって英文を書くときの正しい組み立て方(F.o.R.の場合は英文を読み書きするときの頭の動かし方)が知らず知らずのうちに身につくのです。日本でも、戦前の旧制高校の受験勉強では、これに似た練習が盛んに行なわれ、ナンバー・スクール(一高や三高など)や軍学校(陸軍士官学校や海軍兵学校)の合格者の英文読解力が現在の東大合格者のレベルを超えていたことは周知の事実です。

昔(特に戦前)のものは何でも悪い、劣っていると決めつけるのは、戦後の日本社会の悪弊です。古かろうが新しかろうが、良いものは良いし、正しいものは正しいのです。Frame of Referenceは、イギリスでも日本でも昔から行なわれてきた英語の勉強法を私が独自に改良したもので、現在の学校関係者から見れば、旧式の一言で片付けられるでしょう。しかし、これが、中学・高校でオーラル・コミュニケーション重視の英語教育を受けてきた多くの受験生に熱狂的に受け入れられていることは、なによりもそのこと(古くても良いものは良い)を証明しています。

F.o.R.は「習うより慣れろ」式の考え方を否定します。記号を使って、細かく一語一語厳密に英文を研究します。このアプローチが自分の気性に合っているかどうかを十分に考えてから入会してください。

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